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マーティン・クロフ博士(ワーヘニンゲン大学学長)の講演を聴いて

オランダの食品研究開発拠点であるフードバレー。
その中心であるワーヘニンゲン大学の学長が日本にやってくる!
ということで、1月22日につくばへ行ってきました。


国土面積は九州と同じくらいの大きさであるのに、
食料品の輸出額はアメリカに次ぎ世界第2位を誇るオランダ。

オランダの農業の強さは、次の3つにあると思います。

● 国民全体で国が置かれた状況を踏まえ、問題意識を共有できている。
● 政府が、国のあるべき姿をデザインし、
  それを実現するために必要な投資や人材育成、環境整備が進んでいる。
● 構築した社会システムが、目標を実現できる方向に機能している。

゜+.――゜+.――゜+

消費地立地型の産業といわれる食品製造業。
なぜなら、市場に近いほど鮮度が良いものを提供しやすいからです。
オランダは昔から貿易が盛んだったので、その強みを活かして
EU圏内の大消費地への食料品販売を強化していくことを国家戦略に据えました。

そのために、
農業・食品関連の研究機関をワーヘニンゲン大学とその周辺に集積させ、
「食のシリコンバレー」ともいえる「フードバレー」を構築。
科学技術インフラ、先進的な顧客ニーズ、専門化が進んだ技術や知識といった
知識ベースの生産要素の集積が、
シナジー効果を生み、イノベーションの苗床としての役割を果たしています。


フードバレーの研究は、常に「市場」を意識し、
実用を目的としたスタンスで、知識を価値に転換することを重視。
企業の課題解決や新商品開発などのニーズに対応した研究が行われています。
実用的であるだけでなく、権威のある科学雑誌に認められるような研究をすることで、
フードバレー全体の世界的な信用を高めています。

研究機関と大学、食品関連企業が密接に連携しているフードバレーの魅力は、
研究機関の最新設備や専門人材へのアクセスが容易であるだけではありません。
企業と研究機関、または、企業同士をマッチングさせる
コーディネーターの役割を担うフードバレー財団の存在です。
大企業だけでなく中小企業にも、
問題解決に必要な会社や研究機関を紹介する仕組みが整っています。

「ここにアクセスすれば、問題解決の糸口が見つかるかもしれない」
という期待を持ち、世界中の食品関連企業がフードバレーにやってきます。
これらの企業が持つ技術力・ノウハウに触れることで、フードバレーは
さらに知識や技術が磨かれていくという好循環が続いていくでしょう。

゜+.――゜+.――゜+

このオランダの優れたネットワークを参考に
「おらが町にもフードバレーを!!」と考える地方自治体が増えてきています。

オランダのフードバレーのような産業クラスターを作るのは
日本では難しいと考えられるので、
問題解決のために有用な企業と研究機関、または、企業同士を繋ぐ
コーディネーターの育成に重点を置くべきだと思います。

その場合、地域の利害ではなく、
顧客のことを第一に考えたコーディネートをしなければなりません。

例えば、ある企業が北海道のフードバレーにアプローチしたとします。
話を聞くと、この企業の問題解決のためには、
北海道のA研究所より千葉県のB研究所のほうが適している。
その場合、顧客のために、ちゃんとB研究所を紹介できるかどうかがポイントです。
問題解決に最適な研究施設を紹介できないならば、
日本のフードバレーは「使えないシステム」ということになります。


また、企業と大学・研究機関を繋げるコーディネーターに
政治的圧力をかけないことも重要です。

「この仕事をさせないなら、今後うちの研究施設は使わせない!」というように
コーディネーターの公正な判断を歪ませるようなことをすれば、
顧客はそっちのけで、自分たちの利害だけを考えていることになります。
そこには、client firstの精神やおもてなしの心は存在しません。

゜+.――゜+.――゜+

技術・知識の共有によりイノベーションを起こすためには、
高い技術を持つ者、革新的なアイデアを持つ者の利益を守る必要があります。

「刺しても痛くない注射針」を開発した岡野雅行さんは、
特許は必ず大企業と連名で取ると言います。
それは、個人で特許を取っても大企業に勝手に使われてしまうから。
裁判に持ち込んでも大企業の弁護団に阻まれて勝てないことが多い。
そうであるなら、最初から大企業と利益を折半する形にしたほうがいいと考えています。

でも、本当はそれではおかしいのです。
能力のある者から技術やアイデアを略奪するようなことをする組織に、
誰が積極的に協力するのか? 協力を要請すること自体おこがましい。

「アイデアを出せ!」と言うなら、
技術者やクリエイターにも十分なメリットや報酬がなければなりません。
大企業が考える独りよがりの“Win-Winの関係”ではなく、
アイデアや特許から得られる相応の利益を開発者も享受できるような
本当の意味での“Win-Winの関係”を築く必要があります。

例えば、大学の研究成果に対して微々たる報酬のみ支払い、
大企業が略奪するようなことはすべきではありません、
研究成果が金銭的な報酬に結びつかなければ、研究自体続けられないからです。

゜+.――゜+.――゜+

また、他国に比べて至れり尽くせりのサービスを受けられる機会が多い日本で、
今以上の商品・サービスを享受しようと思うなら、
顧客と商人の間で適切な協力関係を築くことが必要になり始めています。
そうすることで、両者が恩恵を受け、
新しい価値を創造できる可能性が高まるでしょう。


消費者団体が、よく「より良い商品を流通させるには、
我々消費者が商品・サービスの品質に対して厳しい目を持つべき」
と言います。しかし、その“厳しさ”の判断自体が歪んでいたら、
間違った(より悪い)方向に進んでしまいます。

「良いものを、より安く」と言われますが、それにも限界があります。
どんな名医でも治せない病気があるように、できないものはプロでもできません。
それには理由があります。消費者側が「何故できないのか」を理解して、
生産者やサービス提供者に歩み寄ることで解決する問題もあるだろうし、
よりよい製品・サービスを享受できる機会が広がります。

「そこをなんとかするのが、プロってモンだろう?」
とできないことを強要し続ければ、正直な店はやっていけなくなるし、
不正の温床もできてしまいます。


皆さんの周囲にも、長きにわたり親しまれてきた飲食店があるでしょう。
今後10年の間に閉店に追い込まれる店が増えていくと思います。
20年以上営業していると、改装が必要になってきます。
改装費用を銀行から借りることができたとしても、
その借金を返せるほど儲けることができない店が増えているからです。

改装か、それとも、閉店か?
良い材料を使って、良心的な価格で食事を提供している店ほど
辛い立場に追い込まれています。

そして顧客は、チェーン店(の一部)で偽物を食べさせられているのに気付かず、
本物を提供する個人店に「価格が高い!」「企業努力が足りない!」と文句を言う。
お客様と喧嘩するわけにはいかないので、
良質な個人店は、黙って消えていくしかありません。

このままだと、田舎では、近所に食事する場所がなくなる可能性すらあります。
「買い物難民」の次に「食堂難民」が発生するのは、ほぼ間違いない状況です。

゜+.――゜+.――゜+

クロフ博士のお話を聞いて、

● 国全体で問題意識を共有して、その解決にあたることができるか。
● 高い能力をもつ者が、能力を発揮できるような環境を作れるか。
  また、それを遮るものをいかに排除できるか。

この2つが、日本版フードバレーの成功の鍵だと思いました。


相手の能力の高さを認めるということは、
自分自身を客観視して、自分の能力の優劣を認めることでもあります。
権力を持つ者たち(もちろん消費者も含む)の小さなプライドのために、
上記2つのことができないという事態は防がなくてはなりません。


学校の運動部に、ある競技に優れた選手がいたとします。
自分がレギュラーになれないからと、その選手の足を引っ張ったり、
意地悪をしたりして潰そうとする人がいます。
それなのに、彼が成長してプロ選手になる、オリンピックに出場するなどすると
「地元の星」とか「あいつの先輩なんだ」とか「俺が育てた」などと持ち上げ、
今までしてきた「出る杭を打つ」行為は棚に上げて、上澄みだけ吸おうとする。

もし、仕事やスポーツで、このようなことが横行するならば、
どんなに良いシステムを構築しても機能しないし、
良い結果は望みにくいでしょう。


「相手を潰して、自分を良く見せる」というのではなく、
「相手の能力を認めて、互いに切磋琢磨していく」というような
本当の意味での謙虚さの有無で、
日本版フードバレーの成否だけでなく、日本の将来も決まります。

それができる国は繁栄し、できない国は衰退していく。
ただそれだけであり、そうであるべきだと思います。

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産学官連携強化のためのシンポジウム
- オランダの産官学連携の仕組みを参考に -

● 日時 : 2014年1月22日(水) 13:30 ~ 18:00
● 場所 : つくば国際会議場・中ホール300

● 特別講演  
「オランダ・フードバレーにおける産学官連携による
         農業・食品産業のイノベーションの創出」

ワーヘニンゲン大学学長・ワーヘニンゲンUR副議長
                    マーティン クロフ博士

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/files/press20131226.pdf
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〓 参考文献 〓




日本の「食」は安すぎる 「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない



「キリンCM中止問題:クレーマー増加の背景と対策」

http://allabout.co.jp/newsdig/c/59309

消費者は、もはや「弱者」ではなく、「権力者」です。
そして、モンスタークレーマー(&ペアレンツ)は、日本の病巣だと思います。
権力は、正しく使われないとろくなことはないのですが、
当人たちは“モンスター”である自覚が無いので、非常に厄介です。



オランダ・フードバレーの取り組みとワーヘニンゲン大学の役割

金間大介(科学技術動向 2013年7月号 p.25-29)
http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-STT136-25.pdf


フードバレーとかち海外視察訪問 報告書

フードバレーとかち(帯広市HP)
http://www.city.obihiro.hokkaido.jp/sangyourenkeishitsu/b00foodvalley_event.data/houkoku.pdf


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久松達央さんと野村知司さんのトークイベント

著書『キレイゴトぬきの農業論』がベストセラー間違いなしの有機農家・久松達央さんと、
農家直送、鮮度・味でおススメする八百屋「やさいやふうど」の店長・野村知司さんの
トークイベントに行ってきました!

二人のお話を聴いて印象に残ったことは、次の2つです。

○ 「有機農産物だから」ではなく、「美味しいから」でリピーターになってほしい
○ 自分の考えを押し付けない情報発信を心掛けていること

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.
食生活ジャーナリストの会・2013年度 第5回勉強会
『有機農家と八百屋が語る
キレイゴトなしの安全な野菜・うまい野菜』

● 日時 : 2013年10月29日(火) 18:30 ~ 20:00
● 場所 : 東京ウィメンズプラザ会議室
● 講師 : 久松達央(久松農園代表・有機農家)
       野村知司(「やさいやふうど」オーナー・八百屋)
゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.

久松さんが農家に転身して志したのは、
持ちつ持たれつで暮らしている畑の生き物を上手に利用して野菜を育てる農業。
生き物の数を減らさないように農薬を使わず、
生き物の種類を減らさないように輪作をする。
そして、生育適期に作った栄養価の高い採れたて野菜を顧客に直販するというスタイル。

野菜を育てるには、生育段階に応じて適切な栄養を施し、
病害虫を防ぐなど、生育に適した環境作りをする必要があります。
この環境作りの良し悪しは、野菜の美味しさを決める要素のひとつ。
たとえ有機栽培で野菜を作っても、これがうまくいかなければ美味しい野菜は作れません。

「美味しい野菜を作る」という目的が同じであるなら、
有機農業と慣行農業は、優劣のない平等な選択肢。

「有機農業をやりたい。だから、農薬を使わない」というのではなく、
「美味しい野菜を作るために選んだ手法が、有機農業に分類されるものだった」
と考えている印象を持ちました。

゜+.――゜+.――゜+.

また、お二人の顧客に対する情報発信は、
情報優位にある者が、そうでない者に対して説得するという方法ではありません。

「商品を購入するか否か」という顧客の意思決定の材料となる情報を提供して、
どう判断して行動するかは顧客に任せるという方法です。


ホームページ、ブログ、facebook、メルマガ等を使用して、
単に商品の紹介だけでなく、

○ どのようなコンセプトを持ち、商品を生産・揃えているか。
○ どんな考えを持ち、どのように行動しているか。
○ 農場・店舗の様子(作物の生育状況、栽培方法、仕事仲間はどんな人達か)

などが分かるように伝えています。

そして、興味を持って接触してきた顧客と会話をして、
納得していただけないなら、仕方がない。
納得していただけたら、その顧客にとって信頼できる農家・店であり続ける。
そのための商品の品質維持・向上、情報をブラッシュアップする努力をおこたらない。

この「狙った客層をガッチリ掴む」という手法は、
プレイヤーとしては少数派のニッチャーが生きていく術なのだと思いました。

゜+.――゜+.――゜+.

二人のお話を聴いて、

「有機農産物だから安全・安心、しかも美味しい」とか
「○○ホテルのレストランだから、まがい物は出さない」という発想ではなく、

「実際に、誰がどのように作っているか」
というプロセス重視の視点で物事を見ていくのが大切だという思いを新たにしました。

良いものを選択するために、食に対する感度を高くして、
信頼できる農家やお店を少しずつ見つけていく。
そうすれば、本当に安全で美味しいものにありつける機会は増えていくでしょう。

コミュニケーションを通じて、信頼できる繋がりを構築することは、
自分自身だけでなく、家族の食の安全を保つことにもなります。

久松さんや野村さんから野菜を買うという機会はなかなかありませんが、
お二人のような「野菜の品質に関して信頼できる人」が増えていけば、
昨今の食に対する不安が和らいでいくのではないでしょうか。


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.

【関連リンク集】

〓 食生活ジャーナリストの会 〓
HP :  http://www.jfj-net.com/


〓 久松達央(ひさまつ たつおう)さん関連 〓


◆ 久松農園 ホームページ
http://hisamatsufarm.com/

◆ 著書


キレイゴトぬきの農業論


〓 野村知司(のむら ともかず)さん関連 〓


◆ やさいやふうど BLOG
http://ameblo.jp/nom3-yukigaya/

◆ 10/17発売 別冊ESSEの付録「野菜のハンドブック」を監修


野菜がしっかり食べられるおかず


〓 参考文献 〓



子どもが自ら考えて行動する力を引き出す魔法のサッカーコーチング
ボトムアップ理論で自立心を養う


サッカー無名校を全国制覇に導いた名将・畑監督。
その指導法は、「練習メニューや試合での戦術・スタメン・選手交代などを選手同士の話し合いで決めさせる」、
「監督のアドバイスは、選手が出した結論を否定せず提案する程度にとどめる」というもの。
「言われたとおりにすればいい」ではなく、「選手に考えさせて気づかせる」ことを重視しています。
自ら考えて行動できる、創造性ある選手を育てるための一手法。
「自分の考えを押し付けない情報発信」のヒントになるかもしれません。

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.

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プロフィール

平田 実

Author:平田 実


日本野菜ソムリエ協会認定
■ 野菜ソムリエ (中級・緑)
■ ジュニア・アスリート
     フードマイスター

 子供の頃はかなりの偏食。
「サラダを食べなさい
   なんて言う人は鬼!!」
そう思ってました。
 それが今では野菜ソムリエ。
人生、何が起こるか分からない
ものです。

 四季折々の素材の味とハーモニーを楽しんだり、食に携わる人達と交流ができたり。
 好き嫌いを減らして色んなものが食べられるようになる楽しさを多くの人達に感じて欲しいと考えています。

■ blogのメモリーボード
 (↓このblogの画像付き目次)

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筆者より

ここは、私の食関連レポートの公開書庫。
野菜・果物、素敵なレストラン&カフェ、スポーツ栄養学etc.について、
私自身が、「将来、もう一度読み返したい」と思えるような文章を書けたときに掲載していきます。
更新頻度は、年に数回程度になると思いますが、気が向いた時に遊びに来ていただければ幸いです。

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